【目的】食品は口にした際にまず舌表面の大部分を占める上皮細胞と接触する。食品中の味物質は味細胞に存在する味覚受容体に作用し、そのシグナルは味神経を介して脳に伝えられる。今までに、味の強度に関する測定方法は幾つか報告があるが、食品成分の舌上での持続性は官能評価以外に数値化された例はない。本研究では、舌上皮細胞のモデルとして人工脂質二重膜を作製し、食品成分との相互作用を表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて測定する方法を構築した。
【方法と結果】表面プラズモン共鳴(SPR)を測定原理とするビアコアのチップ上に舌上皮の脂質二重膜と同等のリン脂質組成のリポソームを固定した。これと食品成分との相互作用を解析した結果、強い相互作用を示す物質、相互作用が極めて弱い物質、その中間的な物質の3群に分類することができた。甘味タンパク質などは強い相互作用を示す群に属し、官能評価の結果を反映していた。本法が食品成分の口中滞留時間を客観的に評価できる可能性が示唆された。
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