遊走とは、微生物が遊走型細胞へと分化し半固形培地上を鞭毛運動によって活発に移動する現象である。微生物の遊走型細胞への分化は、バイオフィルム形成と同様、微生物細胞同士のコミュニケーションを必要とする。遊走型細胞へ分化はしばしば病原性遺伝子の発現を伴うため、微生物細胞間のコミュニケーション機構を解明すれば、これを阻害することによって微生物の病原性を減衰させることが可能になると考えられる。ポリアミンは、メチレン鎖の両端にアミノ基を有する化合物であり、生体内外で様々な重要な役割を果たしている。微生物は、生育環境に応じてポリアミンの一種であるプトレッシンを細胞外へ放出、あるいは吸収することが知られている。また、近年ポリアミンが細胞外シグナル分子として重要であることを示した研究が増加している。この発表では、大腸菌の新規プトレッシンインポーターであるYeeFが細胞外ポリアミンを取り込むことで遊走誘導に重要な役割を果たしていることを示す。
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