要旨
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近年、病原菌を殺さずに病原性のみを標的とする抗病原性治療薬の開発が望まれている。病原性には情報伝達を担う二成分制御系が深く関与することから、二成分制御系の阻害剤によって病原性が抑制されることが期待される。う蝕の主要な原因菌である Streptococcus mutans でも,歯表面上に定着するためのバイオフィルム形成能と,バイオフィルム内で生残するための酸耐性能という病原性に対して,二成分制御系の関与が報告されている。本研究では,ヒスチジンキナーゼ阻害剤による S. mutans の病原性抑制効果を検討した。まず,枯草菌 WalK (ヒスチジンキナーゼ, HK)に阻害活性を有する walkmycinC (WkmC) が S. mutans の HK (VicK, CiaH, LiaS) も阻害することを確認した。次に,WkmC を添加して S. mutans を培養したところ,バイオフィルム形成に異常が認められた。また,菌を WkmC で前処理することによって pH 5.3 における酸耐性能の低下が認められ,ヒスチジンキナーゼ阻害剤の病原性抑制剤としての可能性が示唆された。本研究は,生研センター異分野融合研究事業によるものである。
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