【目的】我々は、ヒト母乳や唾液中に食品タンパク質が分泌型IgAとの免疫複合体(IC)として存在する事、マウスにおいて母乳哺育により経口免疫寛容が誘導される事を証明してきた。今回は、母乳哺育が抗原特異的なアレルギー症状を抑制する事、ICが経口免疫寛容の直接的な誘導因子である事の証明を目指した。
【方法・結果】食餌中のタンパク質が卵白由来のみのE群、牛乳由来のみのM群に分けてBalb/cマウスを飼育した。各群から生まれてその母乳のみで育った3週齢の仔マウスにAlumを助剤としてOVAで感作後、OVAを経口投与もしくは尾静脈投与することにより下痢もしくはアナフィラキシーショックを誘発させると、E群において両者の症状の抑制が観察された。
また、ヒト唾液をゲルろ過し、OVAのICが検出される画分を分取、濃縮してIC画分とし、これを8週齢のBalb/cマウスに6日間経口投与した。IC画分に含まれる等量のOVAを単独で投与した対照群と比較し、IC投与群でOVA特異的IgG1産生が抑制された。よって、母乳や唾液中に存在するICに食物アレルギーに対する“天然の飲むワクチン ”としての機能がある事が明らかとなった。
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