要旨
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【目的】腸内細菌群から好気条件下での耐酸性、糖消費速度に優れる菌種をスクリーニングした結果、Enterobacter aerogenes G243株が選抜された。G243株は、嫌気条件下(pH5.5)でもEscherichia coli MG1655株の2倍のグルコース消費速度を有しており、G243株からコハク酸生産菌を育種出来れば、培養pHを下げながらも高い生産性が期待される。一方、G243株は嫌気条件下でグルコースを資化し、エタノール(EtOH)、2,3-ブタンジオール(2,3-BD)を主要な生成物として蓄積した。そこで、各合成経路を遮断し、更に補充経路を増強する事でコハク酸生産能を付与できるかを試みた。【方法・結果】adhE (alcohol dehydrogenase) 、aldC (α-acetolactate decarboxylase)を欠損した結果、EtOH並びに2,3-BDの生成が消失した。また、adhE欠損株にActinobacillus succinogenes由来のpckA (phosphoenolpyruvate carboxykinase)、並びにCorynebacterium glutamicum由来のpyc (pyruvate carboxylase)遺伝子を増強した結果、顕著なコハク酸蓄積が観察された。最終的に乳酸、酢酸合成経路の遮断を加える事により、グルコースからコハク酸を主要な生成物とする菌株の構築に成功した。
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