[目的]天然テルペノイドには、ホルモンをはじめさまざまな生理活性物質が知られ、その複雑精緻な構造と多様な生理活性発現は化学生物学的にも注目される。我々は、逆遺伝学的手法に基づいて遺伝子発現から組換え生合成酵素を全て調製し、生理活性テルペノイドの全合成を行っている。今回、モデル化合物として活性型ジベレリンを酵素的に全合成し、さらにその完全13C標識化を達成した。
[方法・結果]酢酸を出発原料にして、メバロン酸、ent-カウレンを経てGA4に至る全15種の生合成酵素を大腸菌及び酵母を用いて調製した。まず、酢酸からメバロン酸を経てent-カウレンの合成を行った。その際ent-カウレン合成は多機能型のコケ由来の酵素を用いた。ent-カウレンからGA12までは酵母ミクロソーム内で生産したP450で反応を行い、反応確認後に可溶性酵素を添加してGA4の合成に成功した。多様な酵素種を全て逆遺伝学的に生産して調製した酵素合成カクテルは遺伝子情報に基づいた新規テルペノイド探索と標識化に応用可能であり、13C標識酢酸からメバロン酸を経て13C標識GA4までの酵素的全合成にも成功した。
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