種分化については様々なシナリオが考えられている。我々は分裂酵母を用い、生殖隔離を実験室内で実現することを試みた。分裂酵母には2つの接合型 (P型、M型)が存在し、その特異性は接合フェロモンと受容体の分子認識により決まる。まず、M型細胞から分泌されるフェロモン (ノナペプチド)のアミノ酸を網羅的に置換したミスセンス変異体を152種類作製し、接合能を欠いた35の変異体を単離した。これらは受容体との分子認識に欠損がある可能性が高い。次に、フェロモン受容体にランダムに変異を導入し、フェロモン変異体の接合能欠損を回復させるサプレッサーを探索し、その単離に成功した。これらは変異型フェロモンを認識できるように受容体が変異したものと推定される。フェロモン認識システムの突然変異により新しい接合型ペアが創れたことから、進化の過程でも、こうした「接合前隔離が種分化のトリガーとなる」ことが強く示唆された。
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