要旨
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ホタルによる黄緑色の発光は、ルシフェラーゼの酵素反応によって基質であるルシフェリンがエネルギー状態の高い励起状態のオキシルシフェリンへと変換された後、基底状態に戻る際に光が放出される現象である。ゲンジボタルルシフェラーゼが黄緑色の発光を行うためにはIle288が発光体であるオキシルシフェリンの方に移動し、しっかりと捕らえることが重要である。活性部位付近周辺の構造を観察したところ、Tyr257とSer286が水を介した水素結合を形成しておりIle288の移動に重要である可能性が考えられた。そこでY257変異体を作製し、活性測定およびX線結晶構造解析を行った。
Y257変異体の発光色スペクトルを測定したところ、615 nmにピークを持つY257A, F, Q, W、および595 nmにピークを持つY257Rが得られ、いずれも赤色側に変化した。このうちY257F, A, R変異体の立体構造を決定したところ、野生型に見られたようなIle288の移動は観測されなかった。従ってTyr257は、黄緑色発光を行う際にIle288をオキシルシフェリン近傍に移動させるスイッチングに重要な残基であることが示唆された。
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