我々は、Ca2+シグナルによる生理機能を解析する過程で、Ca2+シグナルの応答欠損が寿命に影響することを見いだした。特に、S-アデノシルホモシステイン(AdoHcy)水解酵素の変異株sah1-1/scz7は、野生株と比較して許容温度においても増殖遅延が観察され、寿命が短く、興味深いことにテロメア長の著しい短縮化も観察された。そこで、新規な寿命制御因子の探索するため、sah1-1変異株の増殖遅延を指標に、寿命が延長した抑圧変異株の取得を試みた。現在までに抑圧変異株を多数取得し、遺伝的解析から、変異は1つの遺伝子座に集約されることがわかり、この抑圧変異をssg1変異と命名した。sah1-1 ssg1二重変異株では、期待通り寿命が野生株と同程度まで回復し、さらにテロメア長の短縮も抑圧された。以上の結果から、この遺伝子が寿命制御に関わりがあることが示唆された。さらに、SSG1遺伝子のクローニングの結果、その原因遺伝子はERC1(過剰発現によってメチオニンの構造アナログであるエチオニン耐性となる遺伝子として取得、同定された)と同一遺伝子であった。ERC1の寿命制御における役割は不明であるため、この遺伝子の本制御における役割を解析中である。
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