【目的】食品タンパク質の酵素消化による生産法に加え、近年、L-アミノ酸リガーゼ(Lal)を用いた効率的生産法が開発されたジペプチドの生理機能を評価した。その結果、強力な動脈弛緩ペプチドを見出し、さらに、その作用機構を検討した。
【方法・結果】高血圧自然発症ラット(SHR)の摘出腸間膜動脈を用いて、ArgをN末端、芳香族アミノ酸をC末端に持つジペプチドが内皮依存性の動脈弛緩作用を示すことを発見した。この中でRFは最も強い動脈弛緩作用(EC50 = 0.58 μM)を示し、従来の食品由来動脈弛緩ペプチドよりも強力であった。なお、RFにはACE阻害活性は認められなかった。RFの動脈弛緩作用は、NO合成酵素阻害剤のL-NAMEおよびCOX阻害剤のindomethacinでは阻害されなかったが、コレシストキニン(CCK)1受容体アンタゴニストのlorglumideによりブロックされた。さらに、RFはSHRへの経口投与で血圧降下作用を示し、この血圧降下作用もlorglumideで阻害された。RFはCCK受容体に親和性を示さないことから、RFの血圧降下作用にはCCK遊離およびCCK1受容体の活性化を介した動脈弛緩が関与していることが判明した。なお、Lalを用いて合成したRFも動脈弛緩作用を示すことがわかった。
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