要旨
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【目的】酵母は遺伝解析が容易な真核生物のモデルであり、薬剤の作用機構や標的分子解析にも頻繁に用いられている。しかしながら動物細胞と比較し、多くの薬剤に対して耐性を示すことが解析上大きな障害となっている。そこで本研究では、薬剤排出に関わる転写因子や、細胞膜に局在する排出ポンプを多数破壊することで多剤超感受性を示す株の作成を試みた。
【方法及び結果】マーカーレス遺伝子破壊法により、薬剤排出に関わる転写因子、及び細胞膜に局在する排出ポンプを多数破壊した多重遺伝子破壊株(最大12遺伝子破壊)を作成した。得られた株の増殖速度や薬剤感受性、その他の形質を検討したところ、増殖速度に影響を与えずに多くの薬剤に対して高い感受性を示す一方、胞子形成能が極めて低く、遺伝解析に支障をきたす可能性が考えられた。そこで胞子形成に関与することが報告されているMKT1, RME1遺伝子にさらに変異を導入することで、胞子形成能が向上した多剤超感受性株の取得に成功した。今回得られた高胞子形成能を有する多剤超感受性株は、薬剤標的分子同定のための有用なツールになると考えられる。
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